【 おかしければ直せばいい。なければ創ればいい。】

なぜ、過失傷害罪が親告罪とされるのか!?

 あれから諸々にチェック(Webサイトなど)すると、刑法の「過失傷害罪は親告罪」と明記しているものが多いことから困ったなと思い知人に相談すると、ある機関に補足資料として提出したものがあることを知って入手した。
 知人に確認すると、勝手に使ってよいことになり紹介しますね。ただ、「何で私が分かり易く説明する必要があるのかな」と“ぶつぶつ”とも言ってましたね(私も多くをチェックしましたが分かり易いものがなかったことも事実だと思う)
 そこで、勝手に紹介します。少し堅苦しくなるので、「過失傷害罪は親告罪ではない」いうことだけ覚えて、今回は見ない方がよいと思います。
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≪ なぜ、過失傷害罪が親告罪とされるのか!?≫
 なぜ、警察関係者までが、業務遂行に一番関係する実体法としての刑法の基本用語のひとつである「親告罪」を誤った解釈と運用をしている事実が不可思議ある。その誤った運用の例として、「過失傷害罪は親告罪である」として、結果的に警察官が違法(違憲)行為を行っている。
 はじめに、警察官とは直接関係ないが、先々週かな次のように「司法試験」を問題とする番組を見た。
   
 この番組では、「法学教育の改革と法曹養成制度」の話の中で、現在では司法試験を希望する者の多くが、大学の法学部で学ぶと共に、司法試験の予備校などのダブルスクールを行っているようだとした。
 そして、司法試験では予備校などの影響もあって、表面的な知識だけをもって、体系的な法律の理解、法的に考える力などが十分でない合格者が増えていると指摘していた。
 この点で捉えると、警察官の多くが、刑法を表面的な知識だけをもって、体系的な法律の理解、法意を含めて法的に考える力などが不足していることになる。
 しかし、Webサイトを「過失傷害罪 親告罪」で検索すると、警察官の力不足を弁護するつもりはないが、多くのサイトで「過失傷害罪は親告罪」とする誤った記載があることも事実である。無論、一流の弁護士、あるいは公の法律関係サイトでは、その誤った記載はない(もし、あれば責任問題となる)
 だって! 過失傷害罪は親告罪であって、犯人を知って6ヶ月が経過しているから告訴することはできないとした警察署があれば、その警察署は憲法(裁判を受ける権利)違反を犯したことになる。無論、憲法には罰則規定はないが、憲法すなわち義務規定を犯した警察官(国家公務員法地方公務員法)には、山ほど懲戒処分に該当する(念の為…、だって!検察関係者の中には、示した法律だけにこだわり罰則規定がないから告訴・告発できませんとする方がいましたから…、困ったものです)
 以前に親告罪他の犯罪との区別する説明から次のように示した。

 告訴がなければ公訴することのできない犯罪の中に「親告罪」もあります。また、「親告罪」は刑法で、“「親告罪」ですよ”と明記されています。

   *公訴とは、検察官が裁判所に起訴することね。
 チェックしたWebサイトを含め誤った認識の多い刑法の「過失傷害罪」と「親告罪」を体系的に捉え説明することにします。
 はじめに、刑法(法律一般)の文法(構成)は、「編・章・条・項・号」からなる。例えば、刑法では、第1編と第2編がある。

  • 第1編 総則
  • 第2編

 各編には、章(条)がある。
 第1編 総則

  • 第1章 通則(第1条−第8条) から 第13章 加重減軽の方法(第68条−第72条)

 第2編

  • 第1章 削除(第73条−第76条) から 第40章 毀棄及び隠匿の罪(第258条−第264条)

 また、各条には項があり、項には号がある。

 改めて、告訴が必要な犯罪は、すべてが親告罪ではない。

 告訴がなければ公訴することのできない犯罪の中に「親告罪」もあります。

 また、親告罪には、各章の中で“(親告罪)”と明記されている条文にて対象となる条(犯罪)を明示してある。

親告罪」は刑法で、“「親告罪」ですよ”と明記されています。

 では、親告罪でない過失傷害罪を次に示す。

第28章 過失傷害の罪
過失傷害
第209条 過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
過失致死
第210条 過失により人を死亡させた者は、50万円以下の罰金に処する。
業務上過失致死傷等
第211条 …省略…
2 …省略…

 刑法 第2編(罪) 第28章(過失傷害の罪) 第209条(過失傷害)が、過失傷害罪を規定するものである。同条2項にて、同条1項の罪(罰則規定)を「告訴がなければ公訴を提起することができない」としていることから 第209条1項の罪のみを、単に告訴する必要性があることを示したものである。
 また、同章にて、“(親告罪)”とする条文がないことから同章には親告罪が含まれないことが分かる。
 ここで、改めて「親告罪」について説明します。
 親告罪にあたる例としては、名誉毀損罪、器物損 壊罪、強姦罪等があげられることが多い。
これらの犯罪は、被害者の意思に反して起訴がされると被害者の名誉が傷つけられたり、被害者をわざわざ煩わせる程ではない軽微な犯罪であることもあり、本人の意思による告訴が必要とされる。
 そう、罪名通りに、親の立場から子供が被った犯罪(被害)対処手段を次のように決めると考えると分かり易い。

  1. 子供の名誉等を考慮する: 名誉毀損罪、強姦罪
  2. 内輪での解決を考慮する: 器物損・壊罪等

 そこで、親告罪の例えとして、名誉毀損罪を次に示す。

第34章 名誉に対する罪
名誉毀損
第230条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2 …省略…
公共の利害に関する場合の特例
第230条の2 …省略…
侮辱
第231条 …省略…
親告罪
第232条 この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2 …省略…

 刑法 第2編(罪) 第34章(名誉に対する罪) 第230条(名誉毀損)が、名誉毀損罪を規定するものである。これは、第232条(親告罪)にて、「この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない」とあり、この第34章にある名誉毀損罪も含め犯罪(条)は、親告罪であると明示されていることになる。
 即ち、このように同章にて、“(親告罪)”とする条文から明示されていない犯罪(条)は親告罪ではないことを意味する。
 改めて、「過失傷害罪は親告罪ではない」ことになる。
 最後に、Webサイトで、親告罪の軽微な犯罪として過失傷害罪を示している誤った記載が気になり、説明を追記します。
 過失傷害の「傷害」を軽微なものと決め付けてしまうことに、大きな勘違いが始まったのだろうと想像することができる。
 過失傷害の「傷害」は、かすり傷から始まり、過失致死の「致死」の手前までを「傷害」とされる。このことは、過失致死罪は、大きな被害と分かり告訴しなくとも公訴(提起)される。しかし、過失傷害罪の「傷害」は、被害として大小があることから本人の罰則を求める意思として告訴が必要となるのです。
 これらのことが理解できない警察官が多いとなれば、次の施設などが機能していなことを意味することになります。
  撮影:2008年4月4日(お花見の途中で、“たまたま”撮影してあったもの)
以上
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 どうでしたか、長くなり少し堅苦しかったでしょう。
 そこで、「過失傷害罪は親告罪でない」と理解できた方にお願いがあります。
 もしも、知り合いのサイトで「過失傷害罪は親告罪」とする誤った明記がある場合は、個人であれ、これから問題となりかねません(特にQ&Aのでは責任も発生しそうよ)。そこで、注意・警告をしてあげて下さい。
 まぁ、どちらにしましても、法律の解釈は、分かり易く正しい方へ修正を行った方が好いと思います。しかし、「過失傷害罪を親告罪」とする問題は、分かる人は分かっていた「簡単な大きな問題」だったと思います(例えば、法律関係のような番組に出て、限りなく無意味なことで騒いだ末に価値のある有名人になったと勘違いして、議員や知事になった者たちは、なぜに、このような「簡単な大きな問題」を対処・解決していなかったのだろう?)
 これから裁判員制度も始まるしな…、“ねぇ、ぽっぽちゃん、変だと思いませんか?”、ほんと不可思議です(お兄さんに見えるが弟さん)